債権管理を最適化!?とある経理部の上司の話
菅野は今月も月末恒例の様子に頭を悩ませている
俺の名前は菅野太郎(かんのたろう)だ。現在は会社の経理部で部長を任されている。
中小企業とはいえ、現在の役職までがむしゃらに頑張ってきた自分をほめてやりたくなる時がある。それだけ俺が新入社員だったころは「どんなことでもひたむきに、つらいことがあってもやり通す」ことが仕事の流儀!仕事の美学!と教えられてきたのだ。
俺がそのころに苦しめられ続けてきた債権管理の仕事もそう。今じゃエクセルを使いこなしている社員がほとんどだが、右も左もわからなかった俺は全くの初心者から初めて、今は検定資格まで取っているほどだぞ。
それだけのことをしてきたのだから、俺と同じようなガッツを部下にも見せてほしいと思っている今日この頃だ。
…しかし、今は俺が思い描いていた経理部からはかけ離れた環境になっている。部長に昇進した俺でさえも月末は債権管理に追われ、部下と一緒にあれでもない、これでもないとハラハラする日々を送っているのだ。
この月になると経理担当者は毎日のように残業。それなのに毎回必ず何らかのミスを出す。一度「やる気があるのか!」と本気で叱った。そうしたらどうだ。部下の江久世(えくせ)が「エクセルでやってるから非効率なんですよ。どうにかしてください」と言ってくるじゃないか!
俺はますます腹が立った。債権管理の業務を最適化してほしいなんて、楽したいだけじゃないのか?毎月ミスしているのだから向上心さえ疑われるぞ。
そんなこんなで、部下の江久世とは毎日ギクシャクする日々だ。向上心と成長が見られない部下を刺激するためにも本当は新しい人員が欲しいのだが、社長からはコストダウンを命じられているから人員を増やすことも難しい…。
江久世もこのままだと本当に音を上げてしまうかもしれない。業務の最適化を図りつつ部下をしっかり育てるにはどうしたら良いのだ…。
部下が育たない、の前に
ミスを繰り返す部下に憤りを覚えてしまうのも無理はないでしょう。しかし「部下が育たない」と嘆く前に、なぜ部下が育たないのかと純粋に考えたことはあるでしょうか?育たない理由を決めつけてはいないでしょうか?
部下が育たない理由を考える前に、経理担当者の仕事や上司自身の立ち振る舞いなどを思い返してみましょう。
経理担当者が苦しむ理由は?
会社の経営にも関わる仕事に携わっている経理担当者はやりがいを感じる一方、大変な労働環境にあります。
経理担当者は会社の金銭に関わるあらゆる事務を担うのが仕事です。
会社の規模によりますが、1日で何百件もの処理をこなさなければなりません。とくに月末は経理担当者が一番大忙しの時期。携わっている方によっては業務量が多すぎて苦しいどころか「つらい」と感じてしまう方が多いでしょう。
経理担当者が業務中で一番苦しむのが、ミスが出ないよう集中しなければならないときです。扱う金額は桁が大きいため、1つでもミスをしたら多額の損害と信用の失墜は免れません。しかも経理には締め切りもあります。ミスを出さないようにしつつ、何件もの処理を定時内に完了しなければならないのです。
しかし経理担当者の大変さ、つらさを知っている方は上司以外に少ないのが現状。社員のなかには金銭の流れを正しく理解しない方が多くいます。そして、そのつらさを一番に知っているべき上司でさえ、経理担当者の苦しみ、つらさに気づけない場合があるのです。そのような上司は経理担当者から嫌われる対象になってしまうでしょう。
嫌われる上司はこんな上司
職場で嫌われる上司にはどのような特徴があるのでしょうか?
部下の努力を無視してミスを指摘する
毎日仕事をこなしている部下の努力をムダにするようにミスを指摘し続ける上司は一番嫌われるといっても良いでしょう。部下が必死でこなしてきた仕事は、上司である自分自身もこなしてきた業務のはずです。仕事の大変さは上司が一番分かっています。
部下は全員が上司のように修羅場を潜り抜けてきたわけではありません。部下がミスをしたときこそフォローして、ミスをしないためにはどうするべきか改善策を考えるのがベストです。
部下の考える力を奪って成長を止める
部下のスキルアップよりも業務を優先する方に意識が向いている上司のもとでは、いくら光る原石が就職したとしても原石のままでいることでしょう。
仕事を前に前にと進めることがマネジメントであると考えている上司は、部下が考えるよりも先に答えを出してしまい、思考を止めてしまう可能性があります。
部下の仕事を奪い続ける上司のもとには、考えることをあきらめた、成長しない指示待ち人間だけが残るでしょう。
部下の状況を考えた叱り方をする
部下が抱えている日々の業務や悩み、状況などを踏まえずに叱るだけの上司に、部下は心を開いてくれないでしょう。仕事は毎日同じではありません。部下は全員性格が違いますし、置かれている状況も変わります。
立場を考えず叱るばかりの上司に、部下は敵対する気持ちしか持ちません。「それはおかしいと思います」と抗議する部下がいればまだ良いですが、ほとんどの場合は伝えたいことを黙秘したまま上司を敵とみなすことでしょう。結果、上司と部下の溝は深まる一方です。
コストダウン・部下のモチベーションどちらも実現するために
大切なのは自分の考えに固執せず、新しい風を受け入れることです。
経理担当者が抱えるコストダウンと部下のモチベーション改善を同時に達成するためには、業務の最適化が必要不可欠。上司のなかには仕事を便利にするシステムに対して敵対心、対抗心に似た感情を持つ方も多いことでしょう。上司は、この感情がコストダウンの鈍化と部下のモチベーションダウンにつながっていることに気付くべきです。
業務が最適化できるシステムを導入することは、楽をすることとイコールではありません。ムダな工数を省くことで、ほかの業務にも着手できるチャンスが生まれると考えるべきなのです。
ムダにかかっていた工数を省けば残業も減り、人員を増やさなくてもよくなります。これがコストダウンにつながるのです。
残業が減った部下は余裕ができ、次第にやる気を取り戻していくことでしょう。モチベーションアップも期待できます。そして上司自身も心に余裕が生まれ、部下との仲も良好になっていくかもしれません。
菅野は社長にシステム導入を提案してみた
俺は思い切って社長に債権管理システムの導入を社長に導入してみた。
これまで大変な業務を強いていた部下のため、そしてこれからの経理部のためだ。
短期的に見たコストダウンは難しいかもしれないが、長い目で見れば大幅なコストカットにつながるに違いない。
社長はどんな反応をするだろうか…。