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売掛金の回収不能はどうしたらいいの?

売掛金の回収不能という事態にスポットを当て、そうした場合の対処方法や回収不能にならないための方策などを取りまとめてご紹介していきます。

売掛金が回収不能、そうなった場合の対処方法とは?

売掛金が回収不能になる…企業としては、まさに泣くに泣けない事態ですね。会社として商品を販売しておきながら、その代金が入金されないということですので、単に商品が売れないという事態よりも、経済的なダメージはより大きいということになります。

もちろん、そうした事態にならないことが望ましいですが、何分相手のあること。そこで、売掛金が回収不能になった場合の対処や、予防するための方策について、ご紹介していきましょう。

回収不能の種類と、それぞれの仕訳方法

ひと口に売掛金が回収不能になると言っても、税務上の基準としては3つの種類があり、それぞれに違いがあります。詳しく見ていきましょう。

法律上の貸倒

文字通り、相手側企業が会社更生法等による更生計画の認可や民事再生法による再生計画の認可、破産法による強制和議の認可などの法的手続きを受けたことによって「債権の全部あるいは一部が切り捨てられた場合」は、この法律上の貸倒となります。

この場合、債権の切捨てが確定した時点で、その金額分を損失に計上します。その上で裁判所に申し立てを行いますが、その段階で貸倒引当金の計上という形で、債権の50%程度を、経費に計上することができます。一方で、最終的な債務整理の決定が下されるまでは数ヶ月から数年かかる場合もあります。債務整理がどのような状況なのかを常時チェックする必要があります。

事実上の貸倒

相手企業の資産状況、支払能力などを鑑み、債権全額の回収ができないことがわかった場合には、その時点で全額を貸倒として経費に計上することができます。ただし上記の「法律上の貸倒」の場合は強制的に経費に算入されるのに対し、事実上の貸倒の場合には、自主的に意思表示をしなければなりません。さもないと、法的整理等が行われるまで、経費算入ができない場合もありえます。

また全額回収不能が条件となっているので、一部でも回収の見込がある段階でこの規定を適用しても、貸倒とは認められず、寄附金の扱いとなってしまう場合があるので注意が必要です。加えて、担保がある場合は担保分の回収可能性があるため、担保を処分した後の残りの債権を、経費処理することになります。

形式上の貸倒

売掛債権で、債務者との取引を停止して1年以上経過した場合、債権金額から1円を備忘価額として差し引いた金額を貸倒として経費に計上することができます。

なお、それ以前にも継続的に取引を行っていることが前提となっているため、一度だけの取引が回収不能になった場合には、対象になりません。また、担保がある場合も適用外となります。

売掛保証のサービスについて

以上のように、売掛金が回収不能になるという事態は、会計処理において面倒なことになってしまうのはもとより、企業にとって大きな損失と不利益をもたらしてしまいます。そうした事態を回避するために、利用を検討しておきたいのが、債権保証サービスです。

簡単に言えば、取引先の倒産や資金不足によって貸倒や回収遅延が発生した際に回収予定金額の全部または一部を保証してくれるというもの。大きく分けて、以下の3種類があります。

取引信用保険

取引先企業の倒産などによって売掛金の回収が不能になった場合、保険金によって損害をカバーするというもの。売掛金全体が対象となるのが基本です。

保証ファクタリング

ファクタリング会社によって貸倒などによる損害がカバーされるというサービスです。数社単位でまとまった契約とするケースが多いです。

個別債権保証

保証会社によって貸倒などによる損害がカバーされるサービスです。こちらは1社単位から契約が可能となっています。

こうした債権保証サービスを上手く利用することで、営業損失回避や資金繰りの安定化、さらには税制上のメリットなども期待できます。

ただし、こうした債権保証サービスは常時利用できるとは限りません。それこそ、債権保証サービスを提供している会社は、取引先の信用力の悪化、倒産状況の変化といったものを常にリサーチしています。債権保証サービスを利用していても、取引先の状況によってサービス提供を受けられない、減額されるなどの可能性もありえることを踏まえておくべきです。

取引信用保険とは

取引信用保険の仕組みとメリット

取引信用保険とは、取引先の倒産によって債権回収が不可能になった時に、連鎖倒産のリスクをカバーするために用意されている損害保険の一種です。

取引信用保険に加入しておけば、相手側企業が再生手続きや会社更生手続き、破産手続きなどを開始した場合、または相手側企業が手形交換所で取引停止処分を受けてその後の回収などが困難になった場合に、自社の損害を一定限度まで保険金によって補填することが可能になります。

取引信用保険は、加入している事実を取引先の企業に知られることがないため、相手に「倒産を疑われているのだろうか」というような不快感を抱かせる心配がありません。むしろ、取引信用保険に加入していることで、企業としてリスクコントロールをしっかりと行っている証拠になり、金融機関などからの融資審査でも有利に働く場合があるというメリットがあります。

ただし、当然ながら取引信用保険に申し込んだ場合は審査を受けなければならず、無事に加入できたとしても保険料がかかります。しかも、審査段階でそもそも自社に対する信用度が低かった場合、保険料が高額になるといった可能性もあるため、リスクとコストのバランスを見極めながら保険会社や商品を選択することが重要です。

なお、取引信用保険の保険料は損金として算入できるため、節税対策としても応用できます。

中小企業倒産防止共済との違い

中小企業倒産防止共済制度とは?

中小企業倒産防止共済とは、「経営セーフティ共済」とも呼ばれ、企業の倒産による中小企業の連鎖倒産や経営難を防止するためのシステムです。

具体的には、事前に積み立ててきた掛金の総額(最大800万円)の10倍までを範囲として、無担保・無保証人・無利子の共済金の貸付け(最大8,000万円)を受けることが可能です。ただし相手側企業が夜逃げした場合などは、貸付けを受けることができません。

掛金は月額5,000~20万円の範囲(5,000円単位)で自由に設定できる上、好きなタイミングで掛金の増額・減額も行えます。また、掛金は損金として、個人事業主であれば事業所得の必要経費として算入できるため、節税対策としても人気です。

入資格は1年以上事業を継続していることに加えて、製造業・建設業・運輸業等では「資本金3億円以下、または従業員数300人以下」というような、業種ごとに異なる条件があります。 その他、解約も任意で行える上、すでに12ヶ月以上の期間で掛金を積み立てている場合、契約期間(納付月数)に応じた解約手当金を受け取れます。ただし、納付月数が40ヶ月未満である場合、元本割れが発生してしまうので注意しなければなりません。また、解約手当金は事業所得となるため、課税対象になる点も重要です。

取引信用保険と中小企業倒産防止共済との違い

取引信用保険と中小企業倒産防止共済との最大の違いは、中小企業倒産防止共済で受け取れるお金はあくまでも借入金であり、返済義務があるという点です。

また、中小企業倒産防止共済による貸付けは無利子で受けられるものの、貸付額の10%に相当する額が掛金から控除されてしまうという点も見逃せません。

つまり、例えば相手側企業の倒産によって1,000万円を借りた場合、その10%に当たる100万円がそれまでに積み立てた掛金から控除してしまいます。しかも、控除された掛金はその後に戻ってくることがないため、実質的に消滅となります。

掛金総額の10倍まで貸付けを受けられるものの、貸付額の10%の掛金が消滅するとなれば、最大限の借入を行うと掛金が全て失われてしまうので、非常に大きな損失となる可能性もあるでしょう。

ファクタリングとの違い

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、支払期日に達していない売掛債権をファクタリング会社へ譲渡・売却し、相手先企業でなくファクタリング会社から売掛金の早期支払いを受けるシステムです。

ファクタリングには、自社とファクタリング会社だけで行う2社間ファクタリングと、相手側企業も含めた3社間ファクタリングがあります。

2社間ファクタリングは、相手側企業から回収予定の売掛金をファクタリング会社から早期に入金してもらい、その後に相手先企業から入金が行われると、その分のお金をファクタリング会社へ支払うという流れです。そのため、万が一にも相手側企業が倒産して売掛金が回収できなくなってしまった場合、ファクタリング会社から資金の返済を求められるリスクがあります。

対する3社間ファクタリングでは、相手側企業に対する売掛債権そのものをファクタリング会社へ売却してしまうため、倒産や債務不履行による回収不能リスクを減らせます。しかし債権者が変更されるため、相手側企業へ債権譲渡を行っている事実を知られてしまう点がデメリットです。

取引信用保険とファクタリングとの違い

根本的に、取引信用保険は回収不能になった損害をカバーするものであり、ファクタリングは回収予定の債権を活用して早期入金を受けられるサービスであるため、両者の間には大きな違いが存在します。

た、取引信用保険では取引先を任意設定できませんが、ファクタリングでは不安な取引先だけを対象として設定できるという違いもあります。

その他、取引信用保険では損害額の80~90%が補償額となることに対して、ファクタリングでは売掛債権の100%が入金されるという点も違いです。ただしファクタリング会社への手数料は発生します。

代表的3社の商品比較

三井住友海上

三井住友海上の取引信用保険は、損害額の90%、もしくは支払限度額で、いずれか小さい額が補償されます。支払限度額や保険料や与信調査の結果によって算出されますが、三井住友海上は国内だけでなく、海外との輸出取引についても補償している点が特徴です。

東京海上日動

東京海上日動の取引信用保険では、未回収の売掛債権から、回収できた額を差し引いて、残った額の95%が補償されます。また、輸出取引に関しても対応している点が特徴です。東京海上日動の取引信用保険へは、全国中小企業団体中央会や日本商工会議所を通じて加入できます。

損保ジャパン

損保ジャパンでは、損害額の95%、もしくは支払限度額が取引信用保険によって補償されます。また、通常は一定期間後に支払われる取引信用保険の保険金ですが、損保ジャパンではBCP特約によって、入金遅延の初日から補償してもらえる点が特徴です。

回収不能にならないための仕組み化

取引先企業の経営悪化や倒産というものは、なかなか判断しづらいものですが、自社でできることとしては「売掛の残高の把握と管理方法を知りたい」のページでもご紹介している、売掛管理のシステム化があります。

専用のシステムやソフトを用いることで、取引先の掛金の回収状況などをデータ化でき、その回収状況によって、その取引先の経営状況や与信枠などを判断する材料にできるのです。危険な兆候があれば、一歩先んじて手を打つことも可能です。

まとめ