医療債権とは
医療債権は診療報酬債権とレセプト債権の2種類
医療機関での債権管理のことを医療債権と呼びます。医療債権は患者が窓口で支払う診療費の診療報酬債権と、毎月医療機関が国民健康保険団体連合会や社会保険支払基金などの保険者に対してレセプトを提出するレセプト債権の2種類に分けられます。
診療報酬債権
医療機関が保険医療サービスを患者に施し、その対価として窓口で受け取るのが診療費、すなわち診療報酬です。患者は保険証を医療機関に提示することで、診療費を1割~3割に抑えることができます。
患者が医療機関の窓口で診療費の一部負担金を支払うのは当然のこと。しかし何らかの事情により支払えず、医療機関側が未集金という形で不利益を被る場合が少なからず存在します。
未集金が増え、患者からの一部負担金の回収が難しくなると医療機関の経営そのものが危ぶまれる事態になりかねません。
レセプト債権
そして医療機関は毎月、レセプト(診療報酬明細書)と呼ばれるものを発行し、保険者である国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金に提出します。患者が窓口で支払う1割~3割の一部負担金の残りである7割~9割を請求するためです。
レセプトに何らかの不備や存在しない被保険者があった場合は、返戻という形で保険者から医療機関に戻されたり、請求点数が減点されるなど制裁措置が取られてしまいます。
未収金が発生するポイント
診療報酬債権やレセプト債権の医療債権で発生する未収金はどのような原因から出てきてしまうのでしょうか。以下、ポイント別にまとめてみました。
患者に支払能力がない
高齢者や定職に就いていない人など、低所得の患者の診療費未払いによって未収金が発生してしまうことがあります。
休日や夜間診療による預かり金処理
窓口が閉まっている休日や夜間診療での時間外診療では、5,000円程度の預かり金を一旦患者から預かり、後日不足分を相殺する仕組みを取っています。しかし、支払い期日までに患者が支払いを怠れば、未集金が発生してしまいます。
緊急受診による未収金
救急搬送されてきた患者など、緊急受診を施した場合の支払会計は、どうしても後回しになってしまい未集金として残ってしまうことがあります。
自賠責保険の場合
仕事中のケガなどの自賠責保険であれば、状況によって入金日が変わってくるため、長期間に渡り未集金が残ったままとなる可能性があります。
保留レセプトによる債権計上
患者の健康保険の種別が不明瞭であった場合も、通常の保険請求と同様に債権に計上し保険者にレセプトを送らなくてはいけません。保険者が非該当と判断されると差し戻されます。このような保留レセプトは、未集金を増幅させる原因となります。
保険者からの返戻および減点措置
医療機関は毎月、保険者にレセプトを提出する前に不備がないかチェックをおこないます。被保険者の名前、生年月日、診療日数、投薬や検査内容、処置や手術、それに応じた病名が入っているかどうかなど細部に至るまで速やかに確認をおこないます。
しかしチェックの時点で漏れや見落としがあった場合は、請求先の保険者から返戻や減点といったかたちで戻されてしまいます。
未収金を発生させないための対策
以上のような原因から未集金を発生させないようにするためには、どのような対策を立てればよいのでしょうか。
前回未集金の診察前清算の徹底
前回やむを得ない理由で未集金が残ってしまっている患者に対して、次回診察をおこなう前に必ず清算をおこなうことを徹底します。支払能力のない人は繰り返す傾向があるため、厳格な対応で望むように心がけます。
支払誓約書や入院誓約書の発行
未集金が発生してしまった場合や入院する前には、いかなる理由であっても支払い誓約書を発行し、支払期日を遵守することを約束させます。本人だけの署名だけでなく、連帯保証人の連絡先や署名も記述することを徹底します。
保険証の確認の徹底
窓口で患者の保険証を毎月チェックすることで、保険種別の変更によるレセプト差し戻しを抑制することができます。
督促状の送付
未集金があり来院のない患者に関しては、督促状を定期的に送付する仕組みづくりをします。返答がない場合は、法的な措置を検討すると申し伝えるようにしましょう。
支払方法の多様化
支払方法を現金だけでなく、クレジットカード、デビットカード、コンビニ収納などを利用できるよう検討しましょう。高額になりやすい入院費は、分割支払や自動振込を可能にするなど柔軟に対応していくことが求められます。
自賠責保険の預かり金処理の徹底
入金日が一定でない自賠責保険に関しては、診察前に一時預かり金で処理をするようにします。保険会社からの入金が確認され次第、差額を計算し患者に返金します。
レセプトチェックの強化
保険請求事務であるレセプトチェックを強化し、漏れや見落としなどの不備を極力減らす工夫や努力をします。電子カルテやレセプトコンピューターのシステム向上を検討するとよいでしょう。
未収金管理システムに求められるもの
医療債権で最も問題視されている未収金。発生してしまう原因と対策がわかれば、あとはシステムを導入し向上を図ることで、医療機関の運営を邁進させていくことが期待できます。
通常業務の医事システムに加え、求められる未収金管理システムとはどのようなものなのでしょうか。
- 窓口未収状況:日々の医事業務で発生した未収金の計上。患者の個人情報や保険種別などを記録していきます。
- 診療報酬請求(レセプト)未収状況:レセプト請求で生じる返戻や減点からの保留レセプト未集金状況の記録。
- 督促作業状況:未集金の患者に対する電話や通達による督促状況の記録と督促状の作成。
- 回収作業状況:未集金を回収したあとの消込作業をおこなう。
- 未集金の統計分析:未集金の全体推移を把握することで、発生の予防に努めることができる。
上記のような機能に加えて、既存のシステムとの連携が取れるのかという点が重要になってきます。既存のシステムに柔軟に対応できるものを選ぶことで余計な費用をかけずに業務の効率化を図ることができます。