上場企業になるために必要な監査の義務
株式を上場するために、まずは何をしなければならないのか。そのためにはどんな準備が必要なのかなど、上場企業になるため知っておきたい監査義務についてまとめています。
上場企業になるためには、さまざまな監査を受けなくてはなりません。証券取引所が行う審査もそのひとつ。この審査には「形式基準」と「実質基準」があり、そのどちらもパスしなければならないため、早めに準備をしておく必要があります。
形式基準
上場企業になるためには、さまざまな監査を受けなくてはなりません。証券取引所が行う審査もそのひとつ。この審査には「形式基準」と「実質基準」があり、そのどちらもパスしなければならないため、早めに準備をしておく必要があります。
時価総額基準
時価総額は、上場時の株価×上場時の発行済株式総数で表されます。この時価総額基準は、東証1部では500億円で国内最大。もっとも低額のものは、ジャスダックとマザーズで10億円。ただし、東証1部では、年間売り上げが100億円を超えていれば、利益が赤字であったとしても上場できるという条件もあるようです。
利益額
東証1部、東証2部では、上場初年の利益は最低1億円、最近1年では4億円という基準があります。東証マザーズでは、利益額は基準になっていません。
上場株式数と株主数
株式数や株主数が少ないと、少量の買い注文や売り注文で株価が乱高下を繰り返してしまうおそれがあり、株価の安定と適正化を図り、市場を安定させるために、一定の株式数と株主数が定められています。
実質基準
実質基準は、上場会社としてふさわしい管理体制を備えているかどうかを審査するための基準です。これは、投資家に対し、上場会社としての適性を満たした会社の株式を提供することで、投資者を保護するという目的のために設定されています。 こちらも、証券取引所によって基準が異なりますが、具体的内容は以下の通りです。
企業の継続性と収益性
仕入れ、生産、販売などの一連の流れを、取引先との関係性を踏まえて検討し、その企業の事業に継続性があるかを確認します。事業計画を精査し、業界の動向、これまでの事業展開などから、上場した後も、安定した収益が見込めるかをチェックします。
企業経営の健全性
役員が同族で占められていないか、兼任が多く経営に支障が出ていないか、株主との関係が必要以上に密接になっていないか、株主の中に所在のわからない者や反社会的勢力がいないか、社長などが社用車を私用に使っていたり、自宅を社宅にしたりして公私混同をしていないかなどを確認します。
企業内容の開示適正
上場後は、企業内容を開示しなければいけません。有価証券報告書の作成、証券取引所が定める固有の決算情報の開示など、かなりの分量になりますが、それを毎年処理できるシステムや能力が整っていることも必要です。
会計監査で引っかかりやすいこと
以下のような場合、会計監査に引っかかりやすいといわれています。上場の準備を考えている人は、事前に確認しておきましょう。
- 会計処理の根拠になる書類が揃っていない
- 会計処理の根拠が検証できない
- 発生主義の会計処理に必要な情報が足りない
- 勘定科目の内訳に不明な残高がある
- 実地棚卸が不十分
- 固定資産の管理体制に不備がある
- 在庫の受払記録に不備がある
- 原価計算をするためのシステムが整っていない
- 子会社との連結決算をするシステムができていない
- 子会社等の存在の合理性が認められないなど、関係会社の整理ができていない
監査をクリアするために
上場のための監査をクリアするには、そのための準備をしっかりしておく必要があります。通常、会計監査のための準備は、監査法人などの専門家に依頼します。会計には専門的な知識が必要であり、外部の専門家にチェックしてもらうことで、公正性を維持することにもつながります。
監査法人が行う準備には、以下のものがあります。
予備調査
まず、現時点の会計上の問題点をピックアップします。内部情報の管理体制や、会計の管理体制の整備など。資本のやりくりの対策が必要になる場合もあります。
財務諸表監査
監査法人が行う、財務諸表(決算書)の適正性を保証するための監査。
内部統制報告制度(J-SOX)への対応
内部統制報告制度とは「財務計算書を適正に作成するための体制がきちんとできているか」ということを社内で確かめ、表明する「内部統制報告書」と、有価証券報告書を併せて提出することを義務付けた制度。内部統制がきちんと機能しているかどうか、経営者がその状況を評価して、その評価を監査法人が監査します。
開示制度対応
有価証券報告書や内部統制報告書、四半期報告書、会社法に基づいた開示情報などの準備が必要になります。
このうち、とくに重要なのが内部統制を構築して評価する「内部統制報告制度」への対応です。内部統制の構築は、業務のルールを明文化して、ITを利用した統制の仕組みを整備する作業をいいます。とくに「業務記述書」「業務フロー図」「リスクコントロールマトリクス」の3点セットの作成が中心になります。
これらの内部統制の仕組みを、企業が自ら評価することを内部統制の評価といい、企業は、その結果をまとめて内部統制報告書として開示する体制を整えなくてはいけません。